--- content_type: concept title: GPUのスケジューリング description: クラスター内のノードのリソースとしてGPUを設定してスケジューリングします --- {{< feature-state state="beta" for_k8s_version="v1.10" >}} Kubernetesには、複数ノードに搭載されたAMDおよびNVIDIAのGPU(graphical processing unit)を管理するための**実験的な**サポートが含まれています。 このページでは、異なるバージョンのKubernetesを横断してGPUを使用する方法と、現時点での制限について説明します。 ## デバイスプラグインを使用する Kubernetesでは、GPUなどの特別なハードウェアの機能にPodがアクセスできるようにするために、{{< glossary_tooltip text="デバイスプラグイン" term_id="device-plugin" >}}が実装されています。 管理者として、ノード上に対応するハードウェアベンダーのGPUドライバーをインストールして、以下のような対応するGPUベンダーのデバイスプラグインを実行する必要があります。 * [AMD](#deploying-amd-gpu-device-plugin) * [NVIDIA](#deploying-nvidia-gpu-device-plugin) 上記の条件を満たしていれば、Kubernetesは`amd.com/gpu`または`nvidia.com/gpu`をスケジュール可能なリソースとして公開します。 これらのGPUをコンテナから使用するには、`cpu`や`memory`をリクエストするのと同じように`.com/gpu`というリソースをリクエストするだけです。ただし、GPUを使用するときにはリソースのリクエストの指定方法にいくつか制限があります。 - GPUは`limits`セクションでのみ指定されることが想定されている。この制限は、次のことを意味します。 * Kubernetesはデフォルトでlimitの値をrequestの値として使用するため、GPUの`requests`を省略して`limits`を指定できる。 * GPUを`limits`と`requests`の両方で指定できるが、これら2つの値は等しくなければならない。 * GPUの`limits`を省略して`requests`だけを指定することはできない。 - コンテナ(およびPod)はGPUを共有しない。GPUのオーバーコミットは起こらない。 - 各コンテナは1つ以上のGPUをリクエストできる。1つのGPUの一部だけをリクエストすることはできない。 以下に例を示します。 ```yaml apiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: cuda-vector-add spec: restartPolicy: OnFailure containers: - name: cuda-vector-add # https://github.com/kubernetes/kubernetes/blob/v1.7.11/test/images/nvidia-cuda/Dockerfile image: "k8s.gcr.io/cuda-vector-add:v0.1" resources: limits: nvidia.com/gpu: 1 # 1 GPUをリクエストしています ``` ### AMDのGPUデバイスプラグインをデプロイする {#deploying-amd-gpu-device-plugin} [AMD公式のGPUデバイスプラグイン](https://github.com/RadeonOpenCompute/k8s-device-plugin)には以下の要件があります。 - Kubernetesのノードに、AMDのGPUのLinuxドライバーがあらかじめインストール済みでなければならない。 クラスターが起動して上記の要件が満たされれば、以下のコマンドを実行することでAMDのデバイスプラグインをデプロイできます。 ```shell kubectl create -f https://raw.githubusercontent.com/RadeonOpenCompute/k8s-device-plugin/v1.10/k8s-ds-amdgpu-dp.yaml ``` このサードパーティーのデバイスプラグインに関する問題は、[RadeonOpenCompute/k8s-device-plugin](https://github.com/RadeonOpenCompute/k8s-device-plugin)で報告できます。 ### NVIDIAのGPUデバイスプラグインをデプロイする {#deploying-nvidia-gpu-device-plugin} 現在、NVIDIAのGPU向けのデバイスプラグインの実装は2種類あります。 #### NVIDIA公式のGPUデバイスプラグイン [NVIDIA公式のGPUデバイスプラグイン](https://github.com/NVIDIA/k8s-device-plugin)には以下の要件があります。 - Kubernetesのノードに、NVIDIAのドライバーがあらかじめインストール済みでなければならない。 - Kubernetesのノードに、[nvidia-docker 2.0](https://github.com/NVIDIA/nvidia-docker)があらかじめインストール済みでなければならない。 - KubeletはコンテナランタイムにDockerを使用しなければならない。 - runcの代わりにDockerの[デフォルトランタイム](https://github.com/NVIDIA/k8s-device-plugin#preparing-your-gpu-nodes)として、`nvidia-container-runtime`を設定しなければならない。 - NVIDIAのドライバーのバージョンが次の条件を満たさなければならない ~= 384.81。 クラスターが起動して上記の要件が満たされれば、以下のコマンドを実行することでNVIDIAのデバイスプラグインがデプロイできます。 ```shell kubectl create -f https://raw.githubusercontent.com/NVIDIA/k8s-device-plugin/1.0.0-beta4/nvidia-device-plugin.yml ``` このサードパーティーのデバイスプラグインに関する問題は、[NVIDIA/k8s-device-plugin](https://github.com/NVIDIA/k8s-device-plugin)で報告できます。 #### GCEで使用されるNVIDIAのGPUデバイスプラグイン [GCEで使用されるNVIDIAのGPUデバイスプラグイン](https://github.com/GoogleCloudPlatform/container-engine-accelerators/tree/master/cmd/nvidia_gpu)は、nvidia-dockerを必要としないため、KubernetesのContainer Runtime Interface(CRI)と互換性のある任意のコンテナランタイムで動作するはずです。このデバイスプラグインは[Container-Optimized OS](https://cloud.google.com/container-optimized-os/)でテストされていて、1.9以降ではUbuntu向けの実験的なコードも含まれています。 以下のコマンドを実行すると、NVIDIAのドライバーとデバイスプラグインをインストールできます。 ```shell # NVIDIAドライバーをContainer-Optimized OSにインストールする kubectl create -f https://raw.githubusercontent.com/GoogleCloudPlatform/container-engine-accelerators/stable/daemonset.yaml # NVIDIAドライバーをUbuntuにインストールする(実験的) kubectl create -f https://raw.githubusercontent.com/GoogleCloudPlatform/container-engine-accelerators/stable/nvidia-driver-installer/ubuntu/daemonset.yaml # デバイスプラグインをインストールする kubectl create -f https://raw.githubusercontent.com/kubernetes/kubernetes/release-1.14/cluster/addons/device-plugins/nvidia-gpu/daemonset.yaml ``` このサードパーティーのデバイスプラグインの使用やデプロイに関する問題は、[GoogleCloudPlatform/container-engine-accelerators](https://github.com/GoogleCloudPlatform/container-engine-accelerators)で報告できます。 Googleは、GKE上でNVIDIAのGPUを使用するための[手順](https://cloud.google.com/kubernetes-engine/docs/how-to/gpus)も公開しています。 ## 異なる種類のGPUを搭載するクラスター クラスター上の別のノードに異なる種類のGPUが搭載されている場合、[NodeラベルとNodeセレクター](/docs/tasks/configure-pod-container/assign-pods-nodes/)を使用することで、Podを適切なノードにスケジューリングできます。 以下に例を示します。 ```shell # アクセラレーターを搭載したノードにラベルを付けます。 kubectl label nodes accelerator=nvidia-tesla-k80 kubectl label nodes accelerator=nvidia-tesla-p100 ``` ## 自動的なNodeラベルの付加 {#node-labeller} AMDのGPUデバイスを使用している場合、[Node Labeller](https://github.com/RadeonOpenCompute/k8s-device-plugin/tree/master/cmd/k8s-node-labeller)をデプロイできます。Node Labellerは{{< glossary_tooltip text="コントローラー" term_id="controller" >}}の1種で、GPUデバイスのプロパティを持つノードに自動的にラベルを付けてくれます。 現在は、このコントローラーは以下のプロパティに基づいてラベルを追加できます。 * デバイスID(-device-id) * VRAMのサイズ(-vram) * SIMDの数(-simd-count) * Compute Unitの数(-cu-count) * ファームウェアとフィーチャーのバージョン(-firmware) * 2文字の頭字語で表されたGPUファミリー(-family) * SI - Southern Islands * CI - Sea Islands * KV - Kaveri * VI - Volcanic Islands * CZ - Carrizo * AI - Arctic Islands * RV - Raven ```shell kubectl describe node cluster-node-23 ``` ``` Name: cluster-node-23 Roles: Labels: beta.amd.com/gpu.cu-count.64=1 beta.amd.com/gpu.device-id.6860=1 beta.amd.com/gpu.family.AI=1 beta.amd.com/gpu.simd-count.256=1 beta.amd.com/gpu.vram.16G=1 beta.kubernetes.io/arch=amd64 beta.kubernetes.io/os=linux kubernetes.io/hostname=cluster-node-23 Annotations: kubeadm.alpha.kubernetes.io/cri-socket: /var/run/dockershim.sock node.alpha.kubernetes.io/ttl: 0 … ``` Node Labellerを使用すると、GPUの種類をPodのspec内で指定できます。 ```yaml apiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: cuda-vector-add spec: restartPolicy: OnFailure containers: - name: cuda-vector-add # https://github.com/kubernetes/kubernetes/blob/v1.7.11/test/images/nvidia-cuda/Dockerfile image: "k8s.gcr.io/cuda-vector-add:v0.1" resources: limits: nvidia.com/gpu: 1 nodeSelector: accelerator: nvidia-tesla-p100 # または nvidia-tesla-k80 など ``` これにより、指定した種類のGPUを搭載したノードにPodがスケジューリングされることを保証できます。